フィーチャー

時里二郎
『胚種譚』

肖像 Ⅰ ――北川健次氏のために イシミカワの実のこぼれる黄金のせつなに鱗翅類の繭が割られ 少年は掬われた水のように生誕する 透かされた静脈の内部で 非在のアオサギが目覚める時 さらされた少年の上腕は蒼穹を孕む 魚たちを漁る裸樹のように少年の掌はひとしきり水の翳りの重さに 揺らぎ ひれやうろこのない魚たちの夢をすべらせる 細長い 螺施を下るオルガンの風に促されて 少年の指は羽繕う嘴のように 胸を擦過する 非在のアオサギの棲む少年の肖像に一本の 見えない腐刻画の線が引かれる

加山又造オリジナル銅版画額
『メタモルフォーシス』

「私は、幼い時、魔性に近い程、随分いろいろな、たしかな事を知っていたような気がする。その上、それらの事が理解できる手懸りを非常に多く知っていたようである。ところが今になってみると、その重大な手懸りの殆どすべてを忘れてしまったようだ。ある時期から以後、私の非常に重要な部分が眠ってしまったようである。しかし、何かほんの少し刺激によって、その眠った部分が蠢動することがある。・・・。木の葉一枚の葉脈。樹木が根から幹、枝、梢と天空に伸びる形。動物の体内を駈けめぐる大動、大静脈から毛細血管。あるいはまた終齢幼虫から蛹の中に起るあの羽化への超時空の世界や、卵 »続きを読む