ベンジャミン・バーバー
『ジハード対マックワールド』

1997、三田出版会、初、カバー、帯、四六版、445P

00円 (在庫なし)

分裂と収斂が同時進行するパラドキシカルなグローバル世界の診断書。
「・・・毎日の新聞をすみずみまで読み、第一面にでてくる民間人の大虐殺や、ビジネス欄で情報スーパーウェーの仕組みや通信事業の合併による経済性などの記事を読み、水平線の360度をくまなく眺めてよく考えれば、われわれの世界と人生がウイリアム・バトラー・イエーツの言う人種と魂という二つの不滅なもののあいだに押し込められていることに誰でも気づくだろう。人種の不滅は部族の過去を反映し、魂の不滅は世界一体の未来を予想している。しかし、われわれの世俗の不滅は堕落し、人種は不満の象徴にすぎず、魂は不当な要求をする身体の大きさに見合うだけのものになってしまった。そして、いまでは魂でなく、身体こそが必要なものの尺度になっている。人種も魂も、希望のない未来のほかは何も与えてくれず、どちらも民主的と言える政体を約束してはくれない。
人種に根ざした第一のシナリオでは、戦争と流血のために人類の大きな集団のなかで部族が並立する状態に戻ってしまう。国民国家は細分化される危機にあり、そこでは一つの文化が他の文化と対立し、国民と国民、部族と部族がそれぞれ対立している。それは何百という偏狭で盲目的な信念の名のもとでの聖戦(ジハード)なのだ。彼らはあらゆる種類の相互依存、人為的な社会協力、相互関係に反対する。技術にも、ポップ・カルチャーにも、統合された市場にも、さらに近代性(モダニティ)にも、また近代性がはぐくむ未来そのものにも反対なのだ。第二のシナリオに扱われる未来は、光まばゆい原色のものであり、経済と技術とエコロジーのひたすら前進しようとする力が生みだすせわしないポートレートだ。それは統合と同質性を望み、あらゆるところで人びとをにぎやかな音楽や高速のコンピュータやファースト・フード―MTV、マッキントッシュ、マクドナルドなど―で魅了し、国家を同質の世界的なテーマパークに変えてしまう。通信、情報、娯楽、商業によって一体化した一つのマックワールドである。混乱(バベル)とディズニーランドのあいだで動きがとれず、世界は猛烈な勢いで分散したり気が進まぬままに合体したりするが、それがまさしく同時に起こっているのだ。・・・」