猫と人

猫は、古今東西の別を問わず、人間の環境世界に溶け込む不思議な生き物で、文学や芸術においてもさまざまに取り上げられています。以下、猫と人間、人間にとっての猫について考える書のいくつかを紹介します。


「吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。・・・掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始(みはじめ)であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。・・・」
(夏目漱石『吾輩は猫である』冒頭より)