NOCTURNE—an einer frau—
繊月 クリスマスの夜更 ヒマラヤ杉
の影絵に 北方の空がいやにあかるい
――粉雪(ゆき)のふりやんだ 下界
そのとき おまえは 白衣をまとって
愁うるとなく 薄青い眸をあげ どこ
かしらない 夜の彼方をうかがうのだ
ピエロオの踊りはやまず 消えがてに
うたごえつづき そして わたしたち
はなにをかたつたのだろう・・・
いつか年老いている 銀の髪 さらさ
らと風に鳴り いろいろなふしあわせ
と みえない夢のはなばな ものがた
ることは もの倦いこと
疑わずにいよう 疑わずにいよう と
くりかえすことは 疑うことであった
・
地上ではさまざまなものが生れていた
ゆくえのしれない夢がひとつ 記憶の
舞台に ほのかなあかるみをそえなが
ら あの葬送のピアノ・ソナタを・・・
息絶えたおまえの傍らにいて 白痴の歌
をうたうのはわたしだった 葡萄いろ
の滴が おまえの唇に凍てついたまま
沈香樹の陰におまえの透きとおった
屍を置き きいろい地平を眺めている
うつろな雲 盲のような悲しみにいて
愛憎もまたうつくしい 山河 みずの
ようなそのこころよ 永久なる狭間に
おまえのなきがらを 葬むろうとする
もはや なにごともかたらないだろう
もう なにごとをくりかえさない と