『掌宇宙:Ⅲ玩具』
柄澤斎

(1983、シロタ画廊、函、限定70部、版画5葉(各台紙11cm x 8cm)、署名)



9万円

「・・・二十世紀を代表する二人の木口木版作家を挙げるならば、その一人はオランダのM・C・エッシャーであり、もう一人はアメリカのレオナード・バスキンである。エッシャーは幾何学的で不思議な世界の計量によって、バスキンは疎外された人間像への悲痛な共感によって、木口木版画の新しい両極を切り開いた。この両極とは宇宙と人間の内面への眼差しであり、虚構と実証との、版画本来の二面性にほかならない。
日本を含めた現代の木口木版によって、歴史に付け加えるべきいくばくの表現が残されているかは、これからの課題と言わなければならないが、先の二人によって示された宇宙と人間の内面、つまりは最も遠いものと最も身近なものとを木口の断面に集約して見せた一人として、日和崎尊夫の名を忘れるわけにはゆかない。
限られた版画の黒と白とを闇と光に置き換えて、人間と宇宙の両極を往還し、その新たな一致点を虚構し実証してみせる以外に、これからの木口木版画の存在理由はないと結論づけるのは、いささか性急にすぎるだろうか。」

柄澤斎『私説木口木版画史:虚構と実証』より(1990年、『特集 柄澤斎 木口木版画―夢の陰刻』、版画芸術)