さまざまな民族、言語、宗教、文化、社会制度、経済システムが共存する空間としてのアジア太平洋地域は、21世紀に入り、その潜在性や可能性がますます高まる一方で、経済格差、環境、人権、安全保障、歴史認識、地政学や人口問題などの課題も山積しています。こうした背景を踏まえ、アジアの芸術家、とりわけ、今後の活躍が期待される美術家による社会とアートの結び付きを考える仕事の一端を紹介します。
アジアの中の一角を占めるインドもまた著しい経済成長を背景に、アジアのみならず、世界の中でもそのプレゼンスを益々高めていると同時に、ナショナリズム、格差、宗派間対立などさまざまな問題を露呈させています。そうした文脈の中で、インドのバロダを拠点にした、版画制作・研究に携わる若手美術家で、社会的メッセージ性の高い創作活動に関わるソグハ・クラサニ(Soghra Khurasani)、チャンドラシェクハール・ワグマール(Chandrashekhar Waghmare) 及びサブラット・クマール・ベヘラ (Subrat Kumar Behera) の仕事の一部を垣間見ます。