『メタモルフォーシス』
加山又造オリジナル銅版画額

1979 年 18cm x 10cm 限定 95 部ノ内 EA 版 サイン マージン少焼け
[ 澁澤龍彦著限定版『玩物草紙』(1979 朝日新聞社)に添付 ]

19万円

「私は、幼い時、魔性に近い程、随分いろいろな、たしかな事を知っていたような気がする。その上、それらの事が理解できる手懸りを非常に多く知っていたようである。ところが今になってみると、その重大な手懸りの殆どすべてを忘れてしまったようだ。ある時期から以後、私の非常に重要な部分が眠ってしまったようである。しかし、何かほんの少し刺激によって、その眠った部分が蠢動することがある。・・・。木の葉一枚の葉脈。樹木が根から幹、枝、梢と天空に伸びる形。動物の体内を駈けめぐる大動、大静脈から毛細血管。あるいはまた終齢幼虫から蛹の中に起るあの羽化への超時空の世界や、卵の卵膜の中で起る生命への初めての細胞分裂、それらが平面的枝分れをしながら、複雑な立体を囲み形造って行く順序と規則、それは零下に達した薄い水膜が、忽ちに美しい唐草文様を窓ガラスに造形してゆく現象に似て、すべてが、全く同一の事であるという鍵を、幼い日の私のある部分は、本当に知っていたようである。私は今、自己のその部分に触れ、それをゆり起こすため絵をかいている。澁澤龍彦、この素晴らしい人は、本当に朝露にぬれ、羽化したばかりの色の若い美しい昆虫を見るような感じの人である。」

加山又造「澁澤龍彦 唐草文様の世界」より