E. H. カー
『危機の二十年』

1952、岩波書店、初、井上茂訳、本全体に経年シミ、B6版、324P

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二つの大戦を生んだ危機の二十年の国際社会の矛盾とディレンマを分析した書。
「戦争への激情が、かき立てられると、この破局を単に一群の僅かな人々の野心と傲慢とのせいにしてしまって、それ以上の解明を求めようとしない状態になりがちであるのは、ほとんど宿命的のようである。しかし、論争が現に行われつつあるときですら、この悲惨事の直接の個人的な原因を求めるよりも、むしろその根底にひそむ深い意味をもつ原因の分析に努力を向ける方が実際には重要であると思われる。もし、平和が世界にかえってくるものなら、そしてまた、事実そのような場合には、ヴェルサイユ条約から十二年と三ヵ月しかたたないのに、第二の大戦の中にヨーロッパをまきこんでしまった、この破壊の教訓こそ、真剣に熟考されなければならないであろう。ドイツの国家社会主義の支配者たちを打倒しても、国家社会主義の出現を可能ならしめた諸条件には触れずにそのままにしておくような解決では、1919年のそれと同様に、短命で悲劇的なものに終るしかないだろう。二つの大戦をおおう≪十年の危機≫ほど、将来の平和建設者たちによって研究されてよい時期は、歴史上存しないと思われる。つぎの平和会議は、もしそれが、さきの平和会議の大失敗を繰り返すべきでないならば、境界線を引くことなどよりも、もっと根本的な問題ととりくむべきだろう。かかる信念に立って、わたしは、来るべき平和の建設者たちに、この書をあえて捧げるものである。」