関根弘
『ルポルタージュ日本の証言⑥:鉄:オモチャの世界』

1955、柏林書房、カバー[少汚れ・ムレ]、新書版、96ページ、本体少しみ、初挿絵:池田竜雄

3,000円

子供たちの夢、オモチャのうしろにある怪物、鉄のオモチャに関するルポルタージュ。
「・・・昨年、比喩についての論争にまきこまれていらい、私はあらためて記録について考え、記録の芸術性をどうしても追及しなければならなくなったが、その結果として現代の寓話を発見したのである。オモチャは単なる現実の反映であるが、オモチャをみた目で、現実をみなおすとき、現実はオモチャのようにみえてくる。つまり、これが比喩、あるいは象徴の段階であるが、一歩進めた私たちの認識は現実をオモチャとして捉えることができなければならない。ここに分析の過程があり、最後の綜合においてオモチャと現実の境界はまったく取去られる。この綜合の世界へ到達しなければならないのだ。
ある種の人たちにとっては会社もオモチャであるが、未来をもっている子供たちにとっても世界そのものがオモチャでなければならない。これは私のレトリックではなく、これこそが私たちのルポルタージュの方法であると考えるのだ。・・・」

(『あとがき』より)

われわれは今、奪われた未来をとりかえすために、祖国の深部に向って出発しようとしている。
言葉の靴をはいてー空をとぶ靴、地にもぐる靴。
そこはしかし、まだ暗く、いたるところに目に見えない壁が張りめぐらされている。工場と工場の間、町と町との間、人と人の間、魂と魂との間に。
われわれは闇にむかって光の薪を投げるもの。
地図のないところにわれわれの地図を創りだそう。

―――ルポルタージュ・シリーズ 日本の証言 刊行のことばより