松隈俊子
『新渡戸稲造』

1969、みすず書房、函(背少焼け・少痛み)、帯(背少焼け・少痛み)、初、四六版、280P

2,000円

東京女子大学の第一期卒業生として新渡戸の薫陶に与った教え子による評伝。

「・・・『武士道』を書くについて、彼は、日本人の道徳生活を支配するもののなかに武士道のあることを示し、武士道的道徳の成り立つ諸徳が、日本固有のものであると同時に、西洋の道徳思想の根本をなすキリスト教の思想といかに共通しているか、武士道の諸徳はキリスト教の思想の中に包含されていることを示したのである。
彼自身が武士道的環境のなかで育まれ、その修養向上の精神がたまたまキリスト教信仰への探求となった。その彼の、現実の苦難を通しての深い体験から生み出されたこの書は、いわば武士道の正しい躾を見につけた日本人が、キリスト教を正しく理解し、その信仰に立ってのみ言い現わしたものといえよう。・・・日露戦争の調停役としてわが国に関係の深いアメリカ第二十六代大統領セオドル・ルーズヴェルトは、この書を読んで非常に感銘を受け、さらに数十冊を求めて、友人にも分ち、愛読をすすめたのみか、アメリカの兵学校、士官学校の生徒にも読むことを勧めた。いかにこの書が当時、世界にセンセーションを捲き起こしたかがわかる。新渡戸は、念願の≪太平洋のかけ橋≫となったのである。・・・」