マリウス・B・ジャンセン
『日本:二百年の変貌』

1982、岩波書店、初、カバー、帯、四六版、232P、加藤幹雄訳

00円 (在庫なし)

米国を代表する日本研究者が、日本の近現代史の軌跡を辿りながら、今後の日本の進路を考える上での示唆を提供する書。「・・・最後に、この≪日本とその世界≫に関する講演について、私の友人たちが指摘している点に触れておかねばなりません。彼らの言うように、杉田玄白、久米邦武、そして第三部で取り上げた二十世紀の日本人たちについて私が論じたのは、彼らの中国とのかかわり方という視点からではなく、西欧とのかかわり方の視点からでありました。これは、日本の知的志向が中国から西欧世界へ大きく移行したことを示すものである、という結論に読者は達するかもしれません。ある意味では、それはもちろん正しい結論であります。日本の世界観を変えたのは、西欧世界から持ち込まれた近代知識と近代科学がもたらした挑戦でありました。そして日本は、この挑戦に見事に対応し、現在では西欧モデルを凌駕するにさえ至ったのであります。アジアの国である日本が、こうした経験を今後どのような新しい建設的方法で生かしていくことになるかをたどるために、第四部を残して置く必要があるかもしれません。・・・西欧から導入した近代知識・科学を生かすための第一段階であった明治後期から大正期においては、日本は完全に西欧的な方法に従い、力の行使による帝国建設を試みたのでした。そして昭和の前半は、破滅への道をたどることになったのです。今世紀終りまでに、日本は中国との間にどのような関係をつくりあげることになるでしょうか。それは、これから中国がどのような国へと発展するかにかかっていますが、同時にまた、新しい日本の将来がどうなるかにも大いにかかわってくるのであります。戦争の記憶は日中双方において、子供の頃に聞いた話となりだんだん薄れつつあります。したがって、本講演の第四部が語られる日が待たれます。・・・」