鶴見俊輔
『大衆藝術』

1954、河出書房、本体経年少シミ、帯、新書版、174P

1,000円

我々に身近な藝術を通し大衆の中に生き続ける生活の思想を求めた清新な労作。「現代の思想家は、ほとんどみな、時代にとりのこされつつあるのでないか。現代の思想家は、現代の大衆の思想問題ととりくむために必要な訓練を、欠いているのではないか。・・・今世紀の変化に対応して、思想家もまた、自己の武装を新しくしなければならない。そうでなければ、やがては大衆と縁なきものになってしまう。いや既に、そうなりつつあるではないか。・・・最初の課題にもどって考えてみると、今日の文筆業者たる我々は、コミュニケーション史上の過渡期に立っているわけである。我々は、この過渡期に殉じるだけの勇気と冒険心を持つべきだ。我々の思想家としての資格に不足あることを認めて、なるべくその不足をおぎなうように努力すべきだ。我々は、活字以外のものに、興味をもつべきだ。つたないものでも良いから、絵を描いてみよう。図案で、思想を表現することを工夫してみよう。人々の表情を見よう。色と形に、もっと注意しよう。物自身を見よう。そういう風にして、表現を新しくし、思想の内容を新しくしなければ、現代の≪職業的思想家≫は、現代の人々の思想的課題にこたえることができないだろう。」