石黒ひで
『ライプニッツの哲学』

1984、岩波書店、初、函、四六版、225P

2,000円

ライプニッツの哲学にまつわる誤解を軽減させ、その思索の多面性に迫る。
「・・・ライプニッツの論理と言語に関する哲学的思索はあらゆる面で、従来考えられたよりも遥かに筋が通っているし、ラッセルが言ったよりははるかに辻褄の合うものである。このことは、私の勝手な思い込みではないかと確信する。多くの点で、ライプニッツの学説は、ロックやバークリーの哲学体系のみならず、カントの哲学に較べても、遥かに新鮮である。勿論、後に指摘するように、ライプニッツの説の中には明らかに誤りであるものもあるし、彼が残した膨大な数の断片には相矛盾する箇所もある。しかし、彼の形而上学が単純極まる論理学説に基礎づけられた抽象的な空中楼閣であると往々考えられてきたが、極く稀な場合を除いては、そのような解釈は当を得ない。彼が説いた多くの諸説は、二十世紀の哲学者及び論理学者によって初めて明らかにされた数々の真理を孕んでいる。私がライプニッツの論理学を、彼の時代の論議のコンテキストの中だけで検討せず、むしろ意識的に今日の論議のコンテキストの中にも置いて検討した理由はここにある。余りにも時代に先行したために、長い間誤解を受けざるを得なかったライプニッツの思索は、このようにしてのみ、理解することが出来ると私は信じて止まない。」