マックス・フッグラー
『クレーの絵画』

1974、紀伊国屋書店、初、カバー、地に少経年シミ、菊版、281P、土肥美夫訳)

2,000円

クレーの作品創作の背後にあるものは何か。
「・・・クレーが芸術を把握するにあたって決定的に重要でだったのは、音楽の体験である。音楽体験に関して彼が占めている特殊な立場は、彼が自分でヴァイオリンやヴィオラを弾き、それを職業的能力にまできたえあげたということではない。他の多くの画家たちも、同じように音楽と深く結ばれ、仕事のための寛ぎや刺激や気分を音楽に見出していたし、クレーにとってもまた、音楽は、内面への方向を確認し、自分の声に聴きいる保証だったであろう。だがしかし、彼にとって音楽はそれに尽きるものではけっしてなかった。音楽は彼の絵画の仕事とパラレルなもの、類似のものだったのである。音楽的経験とは、実は時間的経過のことであり、彼は、そのような経験によって、絵画は運動を含むという絵画へのもっとも重要な要求を獲得したように思われる。正方形、しま模様、網の目、平行線、太い線など、さまざまなフォルムの図式を基礎にして、論理的に構築され、きびしく練り上げられた作品処理、彼の制作のこの特徴は、対位法、ヴァリエーション、転回、十二音セリーなど数学的抽象的な形式と方式に基礎をおいていて、音楽の作曲方法と合致している。クレーにとって、合理的に造形されたそれらのフォルムが、音楽の場合と同様に、内面的な気分をかきたてる担い手となる。・・・」