エドガー・ウィント
『芸術と狂気』

1965、岩波書店、初、函(背焼け・痛み)、255P、四六版、高階秀爾訳

1,000円

BBCリース・レクチャーによる連続講演に基づいたもの。
「・・・これまでの説明で、≪芸術≫という言葉と≪混乱・狂気≫という言葉とを並べたのは、私の独創でもなんでもないことが明らかになったことであろう。私はただ、プラトン、ゲーテ、ボードレール、ブルクハルトなどの心を占めていた思想を反映しているに過ぎない。そのほかにも、これらの人びとと同じようにお互い同士まったく違っていながら同じような芸術の根源に触れて同じ考えを表明した文筆家は、数多くその名を挙げることができる。しかしながら、このような思想がいっこうに新しいものではないというその事実そのものが、おそらくそれ故にいっそう強くわれわれの注意を促してその思想へと向かわせるだけの重みを持っている。想像力の無制限な解放が芸術家にとってひとつの脅威であり、それ故それは細心の配慮をこめて統制さるべきものであるとすれば、われわれが芸術家の体験に参与する時、より低い程度においてにもせよ、同じような脅威がわれわれを脅かすはずである。だがわれわれはこの多忙な芸術生活において、これらの力によって圧倒されてしまわないため、また逆にそれを窒息させてしまわないため、いったいどのような予防策を講じたらよいのだろうか。われわれの芸術経済学は、いかにして過熱と沈滞とをふたつながら避けることができるだろうか。・・・」