丸山眞男
『後衛の位置から』

1982、カバー、帯、四六版、191P

1,000円

『現代政治の思想と行動』への英語版序文、憲法九条をめぐる考察や日本の知識人論など。

「・・・たしかに私は、これらの論文のなかでの日本分析が、生理学的なアプローチというよりも病理学的なそれに傾いていることを否定はしない。しかし戦争直後の状況に鑑みるならば、このことは不自然ではなかった。社会科学者の探究に生気を与えたのは、一つの大いなる問いであった。すなわち、日本をあの破滅的な戦争に駆りたてた要因は何であったのか?過去数十年にわたって西欧の学問・技術・生活様式を吸収し、日本もしくはアジアの伝統よりも西欧の伝統のほうにくわしかった―あるいは少なくとも自分ではそう信じていた―日本の知識人たちが、日本独特の≪皇道≫神話における粗雑きわまる信条に鼓舞された盲目的な軍国主義ナショナリズムの奔流を、結局は進んで受けいれるにいたり、あるいは少なくとも押しとどめるのにあれほどの無力であった、という事態はなぜ生じたのか?これが戦後に社会科学の全分野で仕事をはじめたものにとっての学問的出発点であり、それは同時に市民としての社会的責任感に対する実践的応答でもあった。・・・」