姜尚中
『ナショナリズム』

2001、岩波書店、初、カバー、四六版、161P

1,000円

「・・・冷戦の終結は、日米同盟の漂流を促し、同時に凍結されてきた植民地や戦争の記憶の解氷を加速させることになった。これらの動きは、他方では昨年の歴史的な南北朝鮮の首脳会談の実現とも関連して北東アジアの冷戦の構図を塗り替えようとしている。それは、戦後の日本にその外交・安保・防衛さらに政治・経済・教育などというシステムと、その記憶の装置そのものに変化を促そうとしている。そしてまさに変化の激震が日本を揺るがそうとしているときに国家に収斂し、そこに帰着点を見いだそうとするネオ・ナショナリズムが澎湃と沸き起こり、北東アジアは再び対立と不信の悪循環のなかに退行しようとしているのである。

この地域にいま最も望まれているのは、このようなナショナリズムの「逆流」を掣肘しつつ、同時にグローバル化の「暴走」を制御できるような協調的な多国間的地域秩序の構想であり、・・・」