藤田省三
『転向の思想史的研究―その一側面』

1975年、岩波書店、初、函(背少焼け)、四六版、272P

1,000円

時代背景としての戦前・戦後の社会思想的状況との関連で≪転向≫を論ずる。「・・・転向とは、ここでは、全く主体的な概念として考案されている。状況の中に喰い込んで、状況自体を目的意識的に変えてゆくためには、単に、状況の中に内在している≪転化の法則≫によりかかってばかりいたのでは駄目だ。≪客観世界の法則≫の他に、状況と変革主体との関係をできるだけ正確に法則的に捉えてそれによって主体的な原則をつくりその原則によって状況に働きかけねばならない、と考えるのである。いわば、運動自体を法則化しようとするのだ。そうして運動の法則は、≪客観世界≫の法則と対応して弁証法の定式に適合していなければならない。この努力を行うときに、転向が生ずるのである。無法則の運動から法則的運動へと法則的に転化しようとする能動的な行動が、≪転向≫なのである。・・・」