『ロセッティ詩抄』

1958、大雅洞、マーブル総革装、函、蒲原有明訳、九十部の内刊行者本・非売品10部、宮下登喜雄銅版画二葉、71P

00円 (在庫なし)

序のソネット

ソネットは一刹那の銘文・・・「魂」の永遠から

滅しても滅しえぬ末期に亘る記録として、見よ、

そのあるべきやうは、祝祭にも、はた凶會日にも、

ふさわしく、つつましやかに、たじろがぬ熱意に

充ちたおぼえ書き。晝と夜との現実の差別をみせて、

象牙にあるは黒檀に彫り刻み、東邦の匂に潤む

真珠もてその歌の髻華をちりばめ、最高の

精妙な技の不朽さを「時」に示してあれ。

 

ソネットは一個の泉貨、その表には心霊を象り、

うち返しにはそれぞれの「権能」に属する刻印がある。

「生命」の止むに止まれぬ願望には貢物として、また

「戀」の派手な行列には引出物として奉仕する。

それのみか、三途のうつろな黄泉路の中で、「死」への

贄として、渡守カロンが手におくのも、またこの寶ざね。