序のソネット
ソネットは一刹那の銘文・・・「魂」の永遠から
滅しても滅しえぬ末期に亘る記録として、見よ、
そのあるべきやうは、祝祭にも、はた凶會日にも、
ふさわしく、つつましやかに、たじろがぬ熱意に
充ちたおぼえ書き。晝と夜との現実の差別をみせて、
象牙にあるは黒檀に彫り刻み、東邦の匂に潤む
真珠もてその歌の髻華をちりばめ、最高の
精妙な技の不朽さを「時」に示してあれ。
ソネットは一個の泉貨、その表には心霊を象り、
うち返しにはそれぞれの「権能」に属する刻印がある。
「生命」の止むに止まれぬ願望には貢物として、また
「戀」の派手な行列には引出物として奉仕する。
それのみか、三途のうつろな黄泉路の中で、「死」への
贄として、渡守カロンが手におくのも、またこの寶ざね。