邂逅Ⅰ
あなたは
こうして待っている
わたしのこころのせつなさを知らない
だからことばの修正ばかりしている
あなたは
こうして待っている
わたしのこころの貧しさを知らない
だからそぶりばかりみせて通る
あなたは
あなたが与えた果実の
その生育を知らない
いま なにもかも
活人画のように わたしから
遠ざかり
ガラスの容器に入れられ その日から
わたしはみつめるひととなる
あなたは
あなたのまなざしひとつで
このガラスが溶けることを知らない
だのに
あなたは
傷をなでにくるばかり
邂逅Ⅱ
暗闇のなかで
とても期待できなかったが
強くにぎりかえした人
あなたは何処へ行ったのか
どんなにせがんでもあなたは
ついにその顔を見せてくれなかった
暗闇に浮かんだ
乳房は
夢だったのか
出て行くあなたを追って
ぼくはひとすじに歩いた
町の大通りに追いこして
ゆっくりふりむいたのだが
ふりむいたぼくの脳裡に
あなたは枯葉のような笑いを見せて消えた
じんわり
とよみがえる
あなたとの邂逅を
あなたは知らない
『距離』より