中沢新一
『はじまりのレーニン』

1994年、岩波書店、カバー、帯

1,000円

「・・・笑いが開くその無底の空間を、レーニンは<物質>と名づけた。そして、その<物質>にむかってこころみられる、知性のおこなうかぎりない接近の実践運動を、<唯物論>と呼んだ。だから、レーニンの唯物論とは、笑う哲学の別名なのだ。笑う哲学である唯物論は、笑いによって、信仰と宗教を凌駕しようとするだろう。またそれは、笑いによって、革命をおこなう。テーブルの下に頭をつっこんでも、なおおさまらない嵐と同じ本質をもった力が、暴力となって国家機構を破壊しようとするだろう。笑いのなかにあっては、かぎりないやさしさと、おそるべき残酷が共存している。やさしさと残酷の共存。それは、レーニンその人のことではないか。」