クロード・レヴィ=ストロース
『人種と歴史』

1970年、みすず書房、初、カバー(少よごれ)、記名あり、四六判、116P

1,000円

ユネスコが人種主義の偏見と闘うべき小冊子のシリーズとして刊行したもので、世界文明に対する諸人種の寄与について論じた書。
    「・・・単調さと画一性に脅かされている世界において、諸文化の差異を保つ必要は、たしかに国際機関の免れぬところであった。国際諸機関は、この目的を達するには、個々の伝統を大切にし、またすでに使命を終った時代に猶予を与えることでは足りないことも理解している。救わねばならないのは、差異という事実であって、各時代が与え、そしていかなる時代も自らを超えて永続させることのできない歴史的内容ではない。したがって、芽を出す麦に耳を傾け、秘められた潜勢力を促進し、歴史が蓄えている生きる力の全体を目覚めさせねばならないのである。・・・寛容とは、かつてあったもの、あるいは今あるものに寛大な態度をとるという瞑想的な立場ではない。それはダイナミックな態度であり、あるべきものを予見し、理解し、促進することなのである。人類諸文化の差異は、われわれの背後に、われわれの周囲に、そしてわれわれの前方にある。われわれが、差異に対してなしうる唯一の要求(各人に対して相互的な義務をつくるような)は、差異の一つ一つがもっとも大きな寛容さで、他のものに貢献するような諸形態の下であらわれることである。」