山川方夫
『親しい友人たち』

1963、講談社、函、帯(少焼け・スレ)、初、230P

00円 (在庫なし)

妻、夫、友人・・・親しい人たちが、何をしでかすかわからない。何を考えているのかもわからない。・・・あなたの生活のなかにひそむ愛の残酷さと恐怖をあざやかにえがくリリシズム。

山川方夫のショート・ショートは、日本でも愛読したし、アメリカに来てからも待ちかねて読んだ。つまり、それは移植しても枯れない文章で書かれ、世界中に通じる現代人の恐怖の源泉にふれている。ここに登場するのは人間であって、お定りの宇宙人ではない。本当に非現実的で、怖いのは、原爆でも宇宙人でもなくて、人間だということを作者が知っているからである。したがってこれは文学であるが、この文学は面白い。誰かがこの本を英訳しないものだろうか。日本の読者だけが独占するのでは、ちょっともったいないような気がする。
プリンストンにて 江藤淳(帯文より)