ハロルド・ラスキ
『現代革命の考察』

1953、みすず書房、初、函、帯、全体的に痛みあり、菊判、522P、笠原美子訳

2,000円

戦後日本の社会科学に多大な影響を与えた、政治学者ハロルド・ラスキによる20世紀の時代精神を論じた重要な書。
「われわれは、人類の近代史において恐らく最も深刻なるべき革命的変革期の真只中に立っている。その本質において、ローマ帝国の没落や、宗教改革に伴う資本主義社会の誕生を見たような時代、あるいは、1789年おける如き、市民階級の劇的な権力獲得史の最終章にも比すべき深刻な意義を擔うものであることを認識せぬ限り、われわれはこの変革期の時代の内的な性格を理解し得ぬであろう。
この変革は思想家たちのつくり出した革命ではない。もっとも、思想家たちのうちには、この革命の来るべきを予見し、この革命の辿るべき方向の大体の筋書をつくりさえした人々があるには相違ないのだが、それは、また、一圑の政治家たちが集って塾議を凝らした上で起した革命でもない。ただし、政治家たちのうちにも、意識的にせよ無意識的にせよ、この革命の出現を促進し、且つその勢い拍車をかけた人々があるには相違ないのだが。この変革の現在の性格をわれわれの社会に賦与している一切のものを見れば、そこにはこの変革の本性が表れており、またこの変革の必然性も見出されるであろう。いうまでもなく、われわれは、この変革の出現を認め、これを迎える用意を整えることができる。その場合には、われわれがこれまでに知っている如何なる文明よりも一層豊かな、しかも一層安定した文明をうちたてることができるかも知れぬ。あるいは、われわれはこの変革の襲来を阻止したいと望むかも知れぬ。その場合には、いつか未来に現れる或る世代の眼から見れば、われわれの時代は、人間の発した命令に反抗するというよりも、寧ろ大洋の潮の流れを押返そうとしてきたように見えるであろう。・・・」