スーザン・バック=モース
『テロルを考える:イスラム主義と批判理論』

2005、みすず書房、初、カバー、帯、四六版、183P

1,500円

西洋の政治的規範のヘゲモニーに異議を唱える批判的言説としての≪イスラム主義≫について論じた書。

「研究休暇の大部分のあいだ、わたしはイスラムという共通言語で表現された、本書では≪イスラム主義≫と呼んでいる言説領域の、さまざまな政治言説について読みふけった。研究者や書き手によって、解釈や評価はさまざまだが、彼らはいずれも一致して、この政治言説を、いわゆる第三世界の数百万ものムスリムが経験してきた≪近代≫にたいする、辛い、しかしやむにやまれぬ批判であるとみている。おそらくなによりこの経験の共有性のゆえに、多様で広大な現代イスラム政治を、ひとつの言説領域とみなしてかまわないだろう。イスラム主義は、ポストコロニアル状況でのイスラムの政治化、対立と討論からなる現代の言説であり、西洋の政治的・文化的規範のヘゲモニーに異議を唱えつつ、政治的正義、権力の正統性、生の倫理といった問題を扱うのである。 ナショナリズム、リベラリズム、フェミニズム、社会主義などと同様に、イスラム主義も、社会的・政治的な討議の枠組みを作るが、討議の内容を占有しはしない。イスラム主義過激派は、軍事的暴力を支持する。しかしもともとイスラム主義は、なによりもまず、知識人と教育者が、しばしば自分の身を危険に晒しつつ紡ぎあげた批判的言説であり、その分析力は、グローバルな公共圏において、非ムスリムにとってもムスリムにとっても議論に値する。・・・」