現存在分析で名高い精神医学者による夢分析を通じた人間存在論。
「ビンスワンガーは、夢の心像内容の中に意味されている実存の意味方向を明らかにしてゆくこと、すなわち夢の心像を現象学的に還元するという操作を用いて、夢の主体が世界に向かっている志向性を分析してゆくことによって、夢の主体者の存在論的実存範疇を認識しようとしたのである。それゆえビンスワンガーにとって、夢は単に睡眠によって惹起されている有機体の営みに尽きるものではなく、有機体の営みにおいて語られているゼーレノの言葉(心像)の中に、覚醒した世界への志向性を探りうると考え、また逆に覚醒しえない夢見る者の存在様式をも照し出すことができると考えるのである。これこそさきに述べた生命と身体に共通に顕現しているウール・フェノーメンを洞察することでもある。また本書にみられるようにフコーが、覚醒に対立すべき状態を睡眠と考え、夢の本質はむしろ、生物学的な営みたる睡眠を妨害するに在る(たとえば悪夢による覚醒)とし、夢こそまさに人間存在の死への営みでさえありうる(睡眠は生命を維持するための営み)と極限するのである。このような意味においては、実存の一つの開示であるところの不安の状態性であるともいいうる。」(本書収録の荻野恒一『現存在分析の出発点』より)
