川添登
『建築の滅亡』

1960、現代思潮社、初、背少焼け汚れ、新書版、208P

00円 (在庫なし)

来るべき建築、都市の未来を考える。
「・・・原始人たちは、大地が無限であり、また、時間が永遠であることを知っていた。それ故にこそ、彼らは、むしろ新陳代謝の状態こそ、その永遠性の中により良く生き続けることになると信じていたに違いない。

永遠性を主張する建築が出現するのは、権力を私有するものの発生によってである。自らの地位―その位置する時間と空間とを奪われることを極度に恐れたものが、いわゆる≪建築≫を生み出したのだ。また、中世のキリスト教徒たちが、永遠性を彼らの大伽藍に表現したのは、実に彼らが終末説を信じたが故にであった。

来るべき世紀は、人びとが土地から離れることによって、ふたたび大地を強くイメージする時代であろう。目まぐるしく進歩と変貌との新陳代謝の中に、悠久なる宇宙の永遠なる時間を感ずる時代であろう。その時代となれば、これまでの概念による≪建築≫は―土地にしがみつき、不変のものとしての建築は≪滅亡≫させられるに違いない。」