エルンスト・フィッシャー
『芸術はなぜ必要か』

1967、法政大学出版局、初、カバー、本体少経年しみ、四六版、275P

1,000円

マルクス主義者の眼を通し芸術史全体を概観した批評家フィッシャーの書。
「・・・世界の変革を宿命として課された階級にとって、なるほど芸術の本質的な機能は、魔術をかけることなどではなく、啓蒙・刺激によって行動を起こさせることであろう。しかし同時に、芸術の中に残っている魔術的要素を完全に拭い去れないことも事実なのだ。なぜなら、あのわずかに残された原初的特質が消え去れば、芸術は芸術たることを止める他ないからである。

荘厳であれ滑稽であれ、説得であれ誇張であれ、正気であれ狂気であれ、空想であれ現実であれ、芸術史上のあらゆる形式において、芸術は常に魔術と多少の関係をもつ。

芸術は、人間に世界を認識・変革させて行く上で必要なものである。しかし芸術が必要なのは、それ自体に内在する魔術の力ゆえだ、ともいえるのである。」