マーティン・ジェイ
『アドルノ』

1987、岩波書店、初、カバー(背少やけ)

1,000円

フランクフルト学派研究の第一人者によるアドルノ論。
「今やわれわれの前に現われ出たアドルノの知的経歴の≪力の場≫は、こうして西欧マルクス主義の生産的エネルギー、芸術的モダニズム、マンダリン的な文化的絶望、ユダヤ人としての自己同定、そしてさらに、脱構築主義のどちらかといえば先取り的な引力、とを含んでいることになろう。たしかにアドルノが、時によってまた気分によって、この五つの力のいずれかにより強く引きつけられるということはあったであろうが、彼の仕事の全体は、これらの力のすべてのあいだの不安定な緊張関係を見るとき、もっともうまくとらえられることになろう。・・・したがって、アドルノというこのユニークな現象を、われわれに可能な最善の仕方で明らかにするためには、彼の思想のうちにある解消不可能な多様な緊張関係の根底にひそんでいると想定される調和のごときものを探しもとめるのではなく、それらの緊張関係にできるだけ忠実であろうとすることによって、彼を概念化してみなければならないのである。」