人文科学

吉田秀和
『セザンヌ物語』

1986、中央公論社、初
00円 (在庫なし)

「セザンヌの芸術で、『調和の幻想』以来の問題意識のはっきり形成されるずっと前から、私をひきつけ、そうして以上の追及を続けてゆく過程でも、私から離れなかったものは、彼の芸術のもつ≪精神的な品位≫、あるいは彼の画面から放射されてくるdignityの強い手ごたえであった。どうして、セザンヌの絵には堅牢で、犯しがたい品格があるのか。・・・近代的パースペクティヴの美学、その不可分のアシンメトリーの構図を解消しても、なお精神の勝利の刻印と呼ぶほかないような作品群が、ここに成立している。それは、どうしてできたか。」

ミシェル・ラゴン
『巨大なる過ち:現代の廃墟=都市』

1972、紀伊國屋書店、初、カバー、四六版、218P、吉阪隆正訳
1,500円

都市と住いの分野での過ちを告発し、人間のための建築・都市の重要性を訴える書。 「建築は人間のことを配慮せずに作られているのか?前向きに、ということは歴史の流れの進む方向に眺めて見るとき、建築は荘厳な記念碑、芸術的な傑作として、バベルの塔からブラジリアの三権広場まで、パルテノンからシーグラム・ビルまで、ルネサンスの市庁舎からル・コルビュジェの住居単位までがあげられる。しかしこれらを斜めに眺め、これらの記念碑の裏に廻って、歴史の流れを忘れて人間のことを考えてみれば、記念碑的な巨大な過ちが浮び上る。」

ハーバート・リード
『モダン・アートの哲学』

1955、みすず書房、初、カバー(少焼け)、帯(焼け)、数か所アンダーラインあり、四六版、371P、宇佐美英治ほか訳
1,000円

世界的美術評論家によるモダン・アート論。 「十五年間の期間にわたっていろいろな機会に書かれた論文集に『モダン・アートの哲学』と題するのはおそらく大げさにすぎるであろう。私はその間ずっと一貫したプランを心に持っていたとはいえないし、また様々の目的が種種スタイルのちがった語り方を要求したのである。一つ、とりわけ変則的なことをあげるとすれば、それは私が、観る者の立場から(外からab extra)、ほとんど或いは全然ことわりもなく、創造する芸術家の立場に移行するので、このやりかたには読者がまごつかざるをえないということである。 しかし、哲学的でないとすれば、私がこの本の中だけでなく »続きを読む

クロード・レヴィ=ストロース
『人種と歴史』

1970年、みすず書房、初、カバー(少よごれ)、記名あり、四六判、116P
1,000円

ユネスコが人種主義の偏見と闘うべき小冊子のシリーズとして刊行したもので、世界文明に対する諸人種の寄与について論じた書。     「・・・単調さと画一性に脅かされている世界において、諸文化の差異を保つ必要は、たしかに国際機関の免れぬところであった。国際諸機関は、この目的を達するには、個々の伝統を大切にし、またすでに使命を終った時代に猶予を与えることでは足りないことも理解している。救わねばならないのは、差異という事実であって、各時代が与え、そしていかなる時代も自らを超えて永続させることのできない歴史的内容ではない。したがって、芽を出す麦に耳を傾け、秘められた潜勢力を促進し、歴史 »続きを読む

クロード・レヴィ=ストロース
『レヴィ=ストロースの世界』

1968、みすず書房、初、カバー、四六版、159P、青木保、他訳
00円 (在庫なし)

レヴィ=ストロースと構造主義について、その生涯、哲学、文藝批評、文化人類学、などさまざな角度から論じた書。氏のライフワーク『神話学』の基本的モチーフとなった『料理の三角形』をも収める。 「・・・文化を通して得たものを長期にわたって所有すると、儀式の面でも神話の面でも、これと引きかえに自然に譲歩することになるかのようである。つまり結果が永持ちする場合は、その手段は不安定でなければならず、そして結果が不安定の場合は、手段は安定していなければならない。・・・異なった方向において特徴づけるこの両義性(アンビギュイティ)は、料理という技術が完全に文化の側にあるものではないことを、体系 »続きを読む