人文科学

土方定一
『画家と画商と蒐集家』

1963、岩波書店、帯、新書版、257P



1,000円

「・・・中世のはじめ、修道院のなかで聖書のミニアチュール挿絵を描いている僧籍にある画家は修道院という閉鎖社会に生きているが、次の時代になって、契約=注文=生産から自由=商品=生産に発展すればするほど、美術市場のなかで生活する画家となってくる。パトロン=蒐集家、発表し売買する仲介場所としての展覧会、売買を仲介する画商が構成する美術市場のなかに入らざるを得ない。そこには、形に影がそうように贋作が現われ、価格がきめられ、競売制度が生まれてくる。 本書は、いわば、鑑賞の背後にある絵の世界、巨匠たちの生きていた≪現代≫の生活的環境と、巨匠の手から離れた作品の社会、経済的現実について、 »続きを読む

ルードヴィッヒ・ビンスワンガー
『夢と実存』

1960、みすず書房、初、荻野恒一訳、序論:ミシェル・フコー、少汚れ、新書版、198P
1,500円

現存在分析で名高い精神医学者による夢分析を通じた人間存在論。 「ビンスワンガーは、夢の心像内容の中に意味されている実存の意味方向を明らかにしてゆくこと、すなわち夢の心像を現象学的に還元するという操作を用いて、夢の主体が世界に向かっている志向性を分析してゆくことによって、夢の主体者の存在論的実存範疇を認識しようとしたのである。それゆえビンスワンガーにとって、夢は単に睡眠によって惹起されている有機体の営みに尽きるものではなく、有機体の営みにおいて語られているゼーレノの言葉(心像)の中に、覚醒した世界への志向性を探りうると考え、また逆に覚醒しえない夢見る者の存在様式をも照し出すこ »続きを読む

アンリ・ペリュショ
『セザンヌ』

1963年、みすず書房、カバー、帯、小口・天に少経年しみあり、四六版、426P、矢内原伊作訳
00円 (在庫なし)

「・・・セザンヌの作品が巻き起した反感はなかなか姿を消さなかったが、またその反面、彼の作品の及ぼした影響は、急速でまた非常に深かった。この影響は、広大且つ永続的だと言える。事実、彼の影響が、現代の主なる芸術活動の大部分を育て上げたと言っても過言ではない。野獣派も、立体派も、エクスの巨匠の名を引き合いに出した。ブラックからマティスまで、ヴラマンクからピカソまで、モディリアニからマルケ、ドラン、アンドレ、ロート、或いはドローネーに至るまで、何と多くの画家達が、彼の刻印を受けていることだろう!彼の死後50年の間に、セザンヌの重要性はますます大きくなった。・・・」

ミッシェル・フーコー
『精神疾患と心理学』

1970年、みすず書房、カバー、初、経年少シミ、神谷美恵子訳、170P
1,000円

「狂気はその文化自体のポジティヴな表現である」フーコーの構造主義的思考の芽生えを知る最良の書。 「二つの問いがある。心理学の分野で、病気について語ろうとするならば、どのような条件のもとにおいてそれが可能なのであろうか。精神病理の事実と、身体病理の事実との間に、どのような関係をさだめうるのであろうか。・・・そもそも精神病理学と身体病理学双方において、病気とか症状とか病因とかいう概念に、同じ意味を賦与するところから、こうした困難がおこるのではなかろうか、と。・・・精神病理の根は、何らの『超病理学(メタパトロジー)』に求められるべきものではなく、歴史的な位置づけの中で、人間対狂人 »続きを読む

福永武彦
『芸術の慰め』

1965、講談社、初、函(背少焼け)、帯、菊判、286P
6,000円

福永武彦による西洋画家論。 「芸術作品とは人類の所有した素晴らしい遺産であり、その時代ごとに人間の魂を表現したものである。時代は移り変り、人間の感じかたは風俗や表現技術や社会制度や思考方法と共に変って行く。しかし芸術家がその作品を生み出す時に発揮した魂は、常に変らない力を保存している筈である。古典的な傑作は、厖大な群小作品を洗い流す「時間」に逆らって、それだけの存在理由を持って残っている。・・・ 私は数年にわたってサナトリウムで寝ていたことがある。またその後もしばしば病気のために床を暖めた。その時、一冊の画集、或いは一冊の詩集、或いはラジオのレシーヴァから漏れてくる音楽の流 »続きを読む