社会科学

藤田省三
『天皇性国家の支配原理』

1966、未来社、初、カバー
00円 (在庫なし)

「明治以来の近代日本において、≪天皇≫の語の意味連関は、実に複雑多岐にわたっている。むろん、あらゆる政治的象徴は、それが取り上げられる政治的状況と、それを操作する政治的勢力の企図如何によって全く逆の意味内容を表象することすら屢々である。しかし、≪天皇≫観念の多義性は、行論のうちに明らかになるように、全く同じ政治的状況のもとで同じ政治的支配者の中に、同時に主観的真実として存在しているというてんで、まさに「万国に冠たるもの」があった。象徴としての≪天皇≫は、或は、≪神≫として宗教的倫理の領域に高昇して価値の絶対的実体として超出し、或は又、温情に溢れた最大最高の「家父」として人間 »続きを読む

藤田省三
『転向の思想史的研究―その一側面』

1975年、岩波書店、初、函(背少焼け)、四六版、272P
1,000円

時代背景としての戦前・戦後の社会思想的状況との関連で≪転向≫を論ずる。「・・・転向とは、ここでは、全く主体的な概念として考案されている。状況の中に喰い込んで、状況自体を目的意識的に変えてゆくためには、単に、状況の中に内在している≪転化の法則≫によりかかってばかりいたのでは駄目だ。≪客観世界の法則≫の他に、状況と変革主体との関係をできるだけ正確に法則的に捉えてそれによって主体的な原則をつくりその原則によって状況に働きかけねばならない、と考えるのである。いわば、運動自体を法則化しようとするのだ。そうして運動の法則は、≪客観世界≫の法則と対応して弁証法の定式に適合していなければな »続きを読む

中島岳志
『中村屋のボース:インド独立運動と近代日本のアジア主義』

2005、白水社、初、カバー、帯、四六版、340P
1,000円

新宿中村屋の≪インド・カリー≫の背後にある隠されたドラマ、20世紀前半のインド独立運動の指導者R・B・ボースの生涯を近代日本のアジア主義との関連で論じた書。 「R・B・ボースは生涯にわたって、アジア諸国の連合による植民地支配からの解放を旨とするアジア主義の主張を説いた。しかし彼にとってのアジア主義は、単なる植民地解放闘争という政治的課題ではなく、多一論的信仰に基づく共生社会を構想する思想的課題であった。R・B・ボースにとって、≪アジア≫とは単にユーラシア大陸の非ヨーロッパ地域という地理的空間ではなく、西洋的近代を超克するための宗教哲学そのものであり、アジア諸国の植民地闘争は »続きを読む

マフムード・マムダーニ
『アメリカン・ジハード:連鎖するテロのルーツ』

2005、岩波書店、初、カバー、帯
2,000円

「本書が生まれるきっかけは、≪9/11≫から数週間後、ニューヨークのアッパーウエストサイドにあるリヴァサイド教会でのトークだった。当時、すぐにムスリムと分かる氏名を持っていれば、≪9/11≫以後のアメリカにおいてはイスラームが政治的存在であることを思い知らされることになった。アメリカではカンパラとダーバンで行われたトークが、私に文化を政治化する今日的傾向、その文脈において、冷戦時代、イスラームの政治化、テロの政治化が捏造されたことを理解させるきっかけとなった。・・・≪9/11≫と政治的テロの分析は文化から政治へと焦点を移さなければならないということだ。私が読者に提供したいの »続きを読む

ライト・ミルズ
『第三次世界大戦の原因』

1959、みすず書房、初、地少汚れ、新書版、255P、村上光彦訳
1,500円

政治・軍事・経済にまたがる権力機構との関係から第三次世界大戦の原因を探る。 「戦争について考察することは人間の条件について考察することである。なぜなら、第三次世界大戦がどんな仕方で起ころうとしているかをみても、人間の条件はいまやきわめて明瞭に表示されているのだから。この戦争のための準備が、いまや世界の指導的諸社会の枢要な特色をなしている。この戦争の予想は、世界現実についての公的定義から生じてくる。これらの定義にのっとって、パワー・エリートは決定し、また、決定しそこねる。公衆と大衆は宿命論的に受けいれる。知識人は洗練し、また、正当化する。第三次世界大戦にむかっての漂流と突進と »続きを読む