人文科学

E・フロム
『フロイトの使命』

1959年、みすず書房、初、新書版、少経年焼け、佐治守夫訳、185P

1,000円

フロイトの精神分析の起源を、真理と理性に対する情熱とそのパースナリティに求め、論じた書。 「・・・真理と理性は、常識や大衆の意見とは対立するものである。大衆は都合のよい理屈に頼ろうとし、物事の表面だけから得られる見解に頼る。理性の働きとは、この表面をつきぬけて、その背後にかくされた本質に達することである。それは客観的に、即ち個人の欲求や恐怖によって決定されることなしに、ものごとや人間を動かしている力が何であるかを明確にすることである。この際には、人は、真理によって邪魔されたり、邪魔を憎む人達からの―たとえ軽蔑や嘲笑はなくとも―孤立には耐えるだけの勇気が必要である。フロイトは »続きを読む

ローラ・フェルミ
亡命の現代史『二十世紀の民族移動1,2』

1972年、みすず書房、初、カバー、四六版、267P+268P
2,000円

アインシュタイン、アドルノ、マルセル・デュシャン、トーマス・マン、パウル・ティリッヒ等、二十世紀の亡命知識人の大きな波の背景を展望。 「著者ローラ・フェルミは原子物理学者エンリコ・フェルミ夫人である。本書は移民の一人である彼女が自ら作成した1900名に及ぶ知識人移民の背景、苦難に満ちたアメリカへの道程、そこでの同化と挫折、異質な文化交叉から生じた業績の飛躍的発展、その現代的意義、未来の展望をクリアーに描いた。・・・ヨーロッパ諸国につくられた数々の自発的な難民救済組織、彼らを受け入れたアメリカの知識人の素早い対応、プリンストン大学高等学術研究所の貢献、すぐれた自由主義者アルヴ »続きを読む

エルンスト・フィッシャー
『芸術はなぜ必要か』

1967、法政大学出版局、初、カバー、本体少経年しみ、四六版、275P

1,000円

マルクス主義者の眼を通し芸術史全体を概観した批評家フィッシャーの書。 「・・・世界の変革を宿命として課された階級にとって、なるほど芸術の本質的な機能は、魔術をかけることなどではなく、啓蒙・刺激によって行動を起こさせることであろう。しかし同時に、芸術の中に残っている魔術的要素を完全に拭い去れないことも事実なのだ。なぜなら、あのわずかに残された原初的特質が消え去れば、芸術は芸術たることを止める他ないからである。 荘厳であれ滑稽であれ、説得であれ誇張であれ、正気であれ狂気であれ、空想であれ現実であれ、芸術史上のあらゆる形式において、芸術は常に魔術と多少の関係をもつ。 芸術は、人間 »続きを読む

廣松渉
『存在と意味』

1990、岩波書店、初、函
4,000円

「人類文明はかなりの以前から世界観的次元でのパラダイムの推転局面―17世紀におけるいわゆる近代的世界観への転換期に次ぐ新たな現代的世界観への転換期―を即自的に径行しつつある。玆に胚胎している新しい世界観的パラダイムを対自化し、可及的に定式化すること、これが哲学の今日的一大課題であり、この課題に対して著者なりに応える拙い構案が謂うところの≪事的世界観≫である。」

マックス・フッグラー
『クレーの絵画』

1974、紀伊国屋書店、初、カバー、地に少経年シミ、菊版、281P、土肥美夫訳)
2,000円

クレーの作品創作の背後にあるものは何か。 「・・・クレーが芸術を把握するにあたって決定的に重要でだったのは、音楽の体験である。音楽体験に関して彼が占めている特殊な立場は、彼が自分でヴァイオリンやヴィオラを弾き、それを職業的能力にまできたえあげたということではない。他の多くの画家たちも、同じように音楽と深く結ばれ、仕事のための寛ぎや刺激や気分を音楽に見出していたし、クレーにとってもまた、音楽は、内面への方向を確認し、自分の声に聴きいる保証だったであろう。だがしかし、彼にとって音楽はそれに尽きるものではけっしてなかった。音楽は彼の絵画の仕事とパラレルなもの、類似のものだったので »続きを読む